「専門的な職業人」に特化したサイト

ミクシィといえばSNSで儲けているイメージが強いが、実は業績好調な時代から収益の中心は(主としてアルバイトなどの)求人・転職サイトである。そもそもSNSというのは知人や友人が勝手にネット上で会っているだけで、それ自体はビジネスモデルにはならない。言ってみれば渋谷ハチ公前や東京駅の銀の鈴のようなもので、待ち合わせ場所を提供するだけでは金は取れない。問題は集まった人たち相手にどんな商売をするかだ。

日本にも上陸しているアメリカのSNSで、今やフェイスブックを上回る勢いで株価と時価総額を高めているリンクトイン(Linkedin)。これは完全な転職サイトだが、ミクシィと違うのは「専門的な職業人」に特化していることだ。

サイト内では専門領域ごとにユーザーが相互扶助的なネットワークを形成して、仕事に関する情報交換を行っている。仕事の相談を持ち掛ければ、同業者からアドバイスがもらえるし、学歴や職歴、会社名、役職などのプロフィールが公開されていて互いのビジネスキャリアも折り紙つきだから、「ウチに来いよ」「あそこを紹介するよ」と新しい職を得るケースもある。

要するにフェイスブックのような有象無象の集合体ではなく、名札と値札が付いたビジネスパーソンの集合場所になっているのだ。これがリンクトインの強みで、企業や人材会社、ヘッドハンターにとっては人材の宝庫だから活用したがるし、ターゲットが選定されているから広告も取りやすい。

同じようなビジネスモデルでも、リンクトインが見据えていた到達点までミクシィは見通せていなかったと私には思える。

グリーにしても射幸心を煽るコンプガチャ(ソーシャルゲームなどのアイテム課金システム。特定のアイテムをコンプリートに揃えることで希少なアイテムが入手できる)で業績を大きく伸ばしたものの、それが封じられてみると、ゲームを主体とするベーシックなビジネスモデルは貧弱。新たなビジネスモデルも描けていない。やはり「見えていない」のである。