日本企業にとって不可欠なのが、日本語の話せるスタッフの確保だ。日本語の話せる事務スタッフ(受付、庶務等)が、150(US)ドル程度。飲食店等におけるホールスタッフで、日本語レベルが低い人材で70~120ドル程度。飲食店の店長クラス及び料理長クラスで800ドル程度。日本語通訳に至っては、昨年段階では、1日200~300ドル程度であったが、現在は、観光ガイドレベル通訳で1日300ドル以上、ビジネスレベル通訳で1日最低でも400ドル、会計法律系の通訳では1日600ドル程度まで高騰している。これは、現在のミャンマーにおいては日本語の話せる人材が著しく不足しており、日本語人材への需給ギャップが急拡大していることが原因だ。

ミャンマーの民間企業は労働市場が逼迫、賃金が上昇しつつある。

このような状況を受け、昨年後半より、ヤンゴンでは、日本語学校の乱立が始まっている。昨年秋ころには86校程度であった日本語学校が、現在は130校を超えるまで急増している。日本語学校で3か月~6か月程度の日本語教育を受け、最低限度の日本語の話せる人材が労働市場に大量供給される来年度以降は、日本語人材への需給ギャップが縮小し、日本語人材の労働コスト高騰にも歯止めがかかる可能性もある。ただし、日本企業の進出ラッシュで、日本語人材への需要も引き続き増加傾向にあることから、一概に需給ギャップが縮小するとは言えない。

このようななか、進出日系企業は、各社、日本語人材の確保競争に巻き込まれ、コスト増を余儀なくされることを避けるため、自社で独自に日本語教育を施すプログラムを提供する企業が増えている。つまり、コスト高になった日本語人材を労働市場で調達するのではなく、日本語のできない人材を調達して、自社で日本語教育を施すという仕組みだ。

オフショア開発の拠点としてミャンマー進出が早かったNTTデータも、毎朝従業員向けに日本語の教育を行っている。日本語の話せないコストの安い人材をまず確保し、その後、自社で日本語教育を施した方が、採算が合うということだ。その他、飲食業やサービス業などの分野での進出企業においても、同様の自社日本語教育プログラムを導入するところが増えている。これは、日本企業に就職を希望するミャンマー人労働者にとっては、無料で日本語教育を受けられるというメリットが大きいことから、優秀なミャンマー人の日本企業への就職希望も増え、結果として、日本企業としては、優秀なミャンマー人獲得の採用ツールにもなっているのだ。