【大石】(用紙を見て)5000円付近で買ったトヨタが今は3000円前後。4300円のHOYAも、3500円の野村不動産HDも、もう半額以下ですね……。

【武井】このあたりの投信もしくじったねえ(と用紙のあちこちを指し示す)。この2つは、いいときは年に30万円くらいの分配金を貰ったよ。今は1万円の基準価格が4000円台まで下がっている。こっちのインデックス投信は同じく購入時1600円台だったのが900円台。この豪ドル建て債券も、70万円くらいで買ったのが今は50万円台。利率はいいけど、為替レートが変わりゃ、そんなもの吹っ飛んじゃうよ。

――どれくらいやられたんですか?

【武井】ピーク時をどこに置くかで違ってくるけど、トータルで800万円くらいかなあ。かみさんに一言、「バカね」と言われた。仲間内でやってるのは多いけど、お互い損した話はしない。でも、実感として多くの人は半分か3分の1くらいにはなってるよ。強力な下降局面で売るのはほんとに難しい。個人投資家はとてもついていけない。トヨタがこう(と右手を斜めに)なるなんて、去年の前半に思ってた人なんていないでしょ?

――いうまでもないですが、昨年9月はやはり大きな分岐点ですね。

【滝上】ウチは関東某県のJR駅から徒歩5分のところに、総額15億円で13階建ての商業テナントビルを計画してました。2年かけて、苦労に苦労して、テナントも事務所も全部決めて。昨年6月頃までには融資の決裁も下り、書類も一切がそろっていて、11月には着工して、来年の夏頃に完成する予定でした。ところが……。

――リーマン・ショック。

【滝上】ええ。その直後に、突然銀行から呼び出しがかかったんです。「大変残念ですが、経済・金融の諸事情が急変しました。つきましては、○○ビル関連でご融資するはずが、不可能となりました」と一方的に言われて……。

【大石】まったくダメ?

【滝上】どんなに頼み込んでも、融資担当者の首はタテには動きませんでした。ウチは資産もそこそこで年商100億円前後と実績もあるし。銀行とは15年の付き合いで、いつもだいたい言い値で貸してくれたんですが……。

――そんな優良融資先でも……。

【滝上】もう、取り付くシマもなかった。出店を予定していたテナントや事務所の関係者には、ほんとにご迷惑をおかけしました。特にひどかったのは、何とか来年へのつなぎで年を越そうとしていた建設業者さん。偶然、土地が売れたために社員の給与の足しにはなったそうですが、それも最盛期の5分の1の価格だったそうで、ほかの仕事も受けていないので、この融資ストップと同時に2月以降の仕事がなくなった。今は破綻寸前です。