この数年の間に、ビジネス雑誌の記者が新しい経済環境を説明するときに、量子力学理論からのイメージを用いることが増えた。念のために言っておくと、原子よりもさらに小さなクォークやグルオンといった素粒子の動きに比べれば、たとえ新大陸の中のビジネスといえども、その複雑さはたいしたことではない。

とはいえ、量子力学理論の心臓部とも呼べるもので、非常にうまい比喩として使われているものがある。それは、物理学者ウェルナー・ハイゼンベルグが1927年に発表した、有名な「不確定性原理」に基づくものだ。

ハイゼンベルグの導いたこの理論は、物質の微少単位を観察する場合、それは粒子として(位置を特定する場合)測定できるのか、あるいは波動として(速度を測定する場合)測定できるのかのどちらかであり、この2つを同時に行うことはできない、というものである。それは、どちらかを測定しようという行為そのものが、影響を与え、もう1つの測定結果を不確定なものにしてしまうからである。