それなら、インターネットやPCの業界も同じなのではないか。そこで総務省のデータなどを見てみると、確かに05年から06年あたりの頃にPCのページビュー(PV)はすでになだらかになり、モバイルのPVだけが順調に増えていました。すでにいま起き始めていることが、気をつけて情報を見ればさざ波のように広がりつつあることがわかる。モバイルの将来性に確信を持った一つのきっかけでした。

未来というものは、過去と現在の連続にあるものです。だからこそ、過去から現在の流れを見ることで、その先が見えるときもある。私は、「PCからモバイルへ」という大きな時代の流れが、メディアやインターネットの歴史の中にどう位置づけられるかを常に考えてきました。

パソコンが登場した当時はこんなもの誰も使わないと言われていたし、テレビも映画会社が全盛の時代は誰も見ないと言われていました。インターネットだって同じ。1990年代の後半以降、PCの性能や通信技術がよくなって、いまでは誰も予想しなかったくらい当たり前に使われています。その歴史を考えたら、いままさに性能が格段に上がっているモバイルにも同じことが起こるのは自然でしょう。ダウンサイジングというコンピュータの歴史の流れの中に、モバイルへの移行は違和感なく位置づけられると考えています。

イノベーションには「連続的」なものと「非連続的」なものがあります。前者であれば、ユーザーの声を直接的に反映させることで生み出されたのかもしれません。しかし、まったく新しい「非連続的」のものを生み出すためには、ユーザーの声を咀嚼し、未来に起こることを想像することが必要です。