解決すべき課題があるから
イノベーションを追求する

2つ目の成長エンジン「飽くなき技術革新」では、まず「ダントツ技術の確立」を掲げています。当社には昔から、技術をとことん追究する気風があり、ダントツじゃないと気がすまない(笑)。例えば「4Dナノデザイン」。これはナノレベルでゴムの分子構造を解析し、高機能材料を設計する手法で、すでに低燃費タイヤ「エナセーブ プレミアム」などを生み出しています。現在は天然ゴム自体の改良へと技術を展開中。さらに「SPring-8」(大型放射光施設)やスパコン「京」など、世界最先端の設備を使い、新素材開発、配合開発を行うプロジェクトも進めているところです。

それにもう1つ。力を入れているのが、新工法の開発です。当社は1913年に国内初の自動車用タイヤ生産を手がけて以来、開発技術と工法を進化させてきました。最近では2003年に確立した新工法「太陽」や、昨年完成させた次世代新工法「NEO-T01」があります。「NEO-T01」で製造したタイヤは従来工法と比較して、高速ユニフォミティを70%低減、10%の軽量化、高速走行時の形状変化50%抑制を実現しています。来年にはこの工法で、安全性、快適性、軽量化のバランスがとれたランフラットタイヤを発売する予定です。

これまで述べてきたように、当社はチャレンジが好きな会社です。ただし、チャレンジやイノベーションの追求は、あくまで手段。目的は社会課題の解決にあります。立ち向かうべき課題があるから、そこに知恵と技術を結集し、挑戦していくのです。

十数年前から研究してきた「100%石油外天然資源タイヤ」も、その典型例でしょう。これは石油や石炭などの化石資源をまったく使用しない究極のエコタイヤです。2008年には97%までこぎ着けたのですが、残り3%が難しかった。しかし今年ついに100%を達成し、量産化も実現。世界初の快挙として、11月開催の「東京モーターショー」で、先のランフラットタイヤともども発表する予定です。

そして最後の、3つ目の成長エンジン「新分野の創出」ですが、ここでは新車用タイヤの海外系メーカーへの納入拡大のほか、タイヤ事業以外では住宅用制震ダンパー「ミライエ」や、ヘルスケアビジネスなどに注力していく方針です。ミライエの需要は順調に伸びており、商品ラインアップも拡大。他方、医療用ゴム分野では、この1月にバイオ製剤の特殊注射器用ガスケット市場にも参入するなど、成長分野への確かな足がかりを築きつつあります。

事業を超え、分野を超え、国境を超えて、相互のコミュニケーションを深める。高い志を共有する組織はピンチに強く、チャンスを逃さないと確信しています。今後当社が、どのように持続可能な社会に貢献していくのか。ぜひ、ご期待ください。その期待にしっかりと応えることで、私たち自身も持続可能な経営を推進していきたいと考えています。

※合成ゴムが主流になって以降。