2000年の住宅品確法の施行、省エネ設備の普及やITの応用などで、日々高められてきた住宅の居住性能。一方、東日本大震災以降、日本人の住宅観に変化が現れてきたともいわれる。そんな最新の住宅のトレンドと、住みたい家を実現するための留意点を、建築家の佐川 旭さんにうかがった。

Key Word 1 家族

間取りの柔軟さと長寿化がもたらすもの

構造耐力の向上で、大空間の確保が可能に。
考えておきたい空間再利用

最近の住宅では、大空間を容易につくり出せるようになっています。20畳大のリビングや吹き抜けのあるリビングなどを、モデルハウスでもよく見かけます。

これは、2000年の住宅品確法施行※などにより、住宅の構造耐力が大幅に向上したことが要因です。耐震・耐久性が高まったわけですが、同時にそれは、間取りの柔軟性とも関係します。

従来は一戸建てといえば、4LDKや5LDKなど、個室の数で言い表されるような画一的な間取りが多かったのですが、今日ではより多様な空間の配置がとられるようになりました。

そうしたなかで注目されるのが、家族の交流スペースのあり方です。従来は決まりごとのように、家族が集い憩う場はLDKと考えられていたのですが、これと併せて家族が自然に顔を合わせ、会話が生まれるような空間的な仕掛けが、さまざまなかたちで盛り込まれるようになっています。

東日本大震災後、家族とのかかわりを大切にする傾向が強まりましたが、多様な接点を設ける空間の工夫も、その流れを受けたトレンドだと思います。

同じように、二世代・三世代が同居する多世帯住宅も、家族が見守り合って暮らす居住スタイルとして注目されるところ。共働き世帯が増え、若年夫婦で親の近くに住む、または同居を望む傾向が強まっています。ここでも親世帯と子世帯の接点が、空間的にどう織り込まれているかが注目点です。

住宅の耐久性の向上は、家が長持ちするようになったことも意味します。10年ほど前で、日本の住宅の耐用年数は平均26年程度といわれました。しかし、今は設備を補修しながら住めば、50年は持つと思われます。そうなると、とくに二世帯住宅の場合、親世帯の住居スペースが空いたあとに、それをどう利用するかという課題が出てきます。実は親世帯との同居期間は、それほど長くないのです。

空いたスペースに自分の子世帯を住まわせるのか、手を入れて貸し室にするか、あるいは住宅自体を貸し家にして、夫婦2人に適当な規模の家に住み替えるなど、いろいろな方策が考えられます。あらかじめ考慮しておいたほうがよいでしょう。

単世帯住宅でも、子供が独立したあとに個室が残ります。子育てを離れてからの生活をより豊かにするため、これをどう使うか。夫婦でアイデアを出し合っておくのも楽しいと思います。

※住宅品確法:住宅の品質確保の促進等に関する法律