2003年3月、社長に就任した。この間に手がけた経営改革やJR名古屋駅への出店などについては、次回触れる。

百貨店業界はデフレの長期化、人口減少など、厳しい環境が続く。そのなかで、利幅が限られている全国ブランドの品よりも、利幅を大きく設定できる独自のプライベートブランド品に力を入れる競争相手が目立つ。収益を確保しようというのは、当然だ。でも、違う、と思う。

そのように部分、部分がすべて利益率だけを追いかけたら、全体としての品揃えに面白さがあるか、バランスがとれるか、疑問だ。部分を優先すると、非効率で商売にならないからやめたほうがいいという品が、消えていく。そうした品々も一緒に入れて、全体で「どうですか?」ということをしていかないと、百貨店としての厚みが失われてしまう。

入社してから45年。いま、百貨店の存在価値は何かと考えると、1つは、やはり買い物そのものの楽しさだろう。もう1つは、商品を売っているだけではなく、いろいろ文化的な催し物もあり、目的以外の品々もみて楽しいという「みる楽しさ」だと思う。世の中に、これだけ豊富な品数がそろっているところはないし、楽しんでもらう演出もされており、様々な夢がある。

すべて効率優先でいったら、百貨店としての存在価値を、自ら否定してしまう。同時に、インターネットの仕組みが、家庭の中にもどんどん入ってくる時代。そういう大きな社会の変化から全く遠いところにいたら、お客は離れていく。変化に対応していきながら、従来からある百貨店の強み、お客に「やっぱり百貨店だね」「やっぱり高島屋ね」と言われるよさに、磨きをかけたい。

相矛盾する点も出てくるが、それらを整合させていくことが、経営陣には求められる。以前よりも来店者は減っても、やはり、人によるサービスが基本。今年度から、契約社員が正社員に転じる門戸を広げ、正社員への受験資格を勤続5年以上から3年以上に短縮した。いま、契約社員の数は約5000人で、平均勤続年数は約7年。これだけの戦力の意欲や能力を、さらに高めてもらい、人によるサービスで勝ち抜くには、当然の選択だと確信する。

(聞き手=街風隆雄 撮影=門間新弥)
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