細かな表情を女は見逃さない

さらに、この「見る」ことにおける男女差として、佐藤さんから挙がったのは表情読み取り能力だ。日常生活でもビジネスでも、相手の顔色をうかがう場面はよくあるが、微細な表情まで見逃さないのは圧倒的に女性だという。

「微細な表情とは学術的には微表情(マイクロ・エクスプレッション)と呼び、まばたき、眼球の動き、口角の小さな上下などが該当します。この微表情が現れるのは、口を開けて笑ったり、目を丸めて驚いたりといった大きな表情に移る前のほんの一瞬。0.5秒ぐらいの間です。大きな表情の変化は意図的にコントロールできますが、微表情は統制が利きません。つまり、この一瞬の小さな表情でその人の本音がわかるというわけです」

具体的にいうなら、「結婚おめでとう」と笑顔になるその直前に微妙に口角が下がれば、嫉妬やねたみが心の内にある証拠。「明日の会議の資料はバッチリできています」と言った瞬間、眼球が泳げば、まだ仕上がっていない可能性が大となる。このわずかな表情を読み取れるか読み取れないか、これが肝となる。

佐藤さんはこの微表情の読み取り能力を調べるために、52パターンの微表情を2秒ずつ撮影したビデオを見せて、感情を推定するという実験を実施。結果、正答率は、女性が男性を大きく上回ったというのである。

「女性がこの能力に長けている理由は定かではないのですが、一説には小さいころから鏡で自分の顔を見る機会が多いため、と言われています。確かに、女の子はお化粧のまねごとをしたり、髪飾りをつけてみたりとよく鏡の前に立ちますよね。もっとも、大人になってしまった男性でも、訓練すれば微表情を読み取れるようになりますよ。そのためには、まず、人の表情に関心をもつことが大切になりますけれどね」

この微表情の読み取り能力が効力を発揮するのは、プレゼンや商談の場面だろう。言うまでもないが、プレゼンや商談において何よりも大切なのは場の空気を読むことだ。相手の反応次第で、臨機応変な対応が欠かせない。

たとえば、新商品に対して「ほう、面白いですね」と言いながらも、一瞬、相手の口角が下がれば、本音では興味がないか、早く終わらせたいと思っているか。当然、話の進め方も変わってくるだろう。

反対に最悪なのは、相手の表情も時間もおかまいなしに、延々自分のペースでしゃべり続けること。結婚式のスピーチによく見受けられるが、こういう空気の読めない話し方をするのは、確かに女性より男性が多い。