そこで「カリグラフィ」という西洋書道と出合いましたが、後に「画面を見た目のまま印刷できるパソコンとして1番最初に成功した」といわれるマッキントッシュを開発の際に、フォントとしてそれが生きるんです。当時はグリーンのスクリーンに無機質な文字しか表示できませんでしたから、画期的なことでした。つまり、点と点がどうつながって線になるかなんて、後から考えなさい。まずはなんでもやってみなさいということです。

山中伸弥教授(ロイター/AFLO、時事通信フォト=写真)

おもしろいことに、山中教授も同じようなことを言っています。「目の前の何かを追うのではなく、もっとたくさんいろいろなことをしたほうがいい」と。彼の好きな言葉は、「人間万事塞翁が馬」。その意味は、人生、何が起こるかわからない。悪いことがあったら、いいこともあるということです。

山中教授が発するこれらの言葉から、山中教授にはラテラルシンキングが習慣づけられているように、私には見えるのです。

では、私たちがラテラルシンキングを身につけるにはどうすればいいのでしょうか。

まずは失敗をたくさんしてもいい環境をつくり、失敗を恐れない心構えをもつことでしょう。失敗を嫌がる人は永遠に大きな成功はのぞめません。過度なロジカルシンキングは失敗を嫌うから前例を踏襲することに精一杯で、新しい何かを捕まえることは不可能になっています。

「失敗は成功の母」とはこのことです。失敗できる環境が整えば、いくらでも自由な発想が生まれるはずです。

次にあらゆる「固定観念」を疑ってみることです。「本当にこの機能は必要なのか」「顧客は違うことも考えているかもしれない」「なぜ、このサービスが必要なのか」など、提示された前提を疑うのです。

コンビニや自動販売機でお茶が当たり前のように販売されています。今では信じられないことですが、缶入りのお茶が発売された当時は、「お茶をわざわざお金を出して買う人なんているわけがない」と、誰もが信じて疑わなかったのです。

子どものようにまっさらな気持ちで「なぜ」を連発してみてください。世紀の大発見をするためのスタートラインに立てるはずです。

木村尚義
1962年生まれ。創客営業研究所代表取締役。六本木ライブラリー個人事業研究会会長。『ずるい考え方 ゼロから始めるラテラルシンキング入門』がベストセラーに。近著に『「ムダ」が多い人ほど、よく伸びる』『「ずるい思考術」練習帳』。
(構成=宮崎俊哉 撮影=小倉和徳 写真=ロイター/AFLO、時事通信フォト)
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