Q.Fさん(57歳)は、3年後に定年退職を控えているが、部分年金がはじまる62歳までは、継続雇用でなんとか働けそう。しかし、年金は満額受給になっても、月23万円程度。いまの生活をどんなに切りつめても1カ月の生活費が32万円ほどかかる見込みであることを考えれば、足りない分は貯蓄の取り崩ししかない。父親からの相続で受け取った1000万円をできるだけ有利に増やしたいと考えている。
【運用資金】1000万円【保有資産】2000万円(定期預金)【住居】持ち家
【老後生活費】月32万円【公的年金見込み額】月23万円(夫婦合計)
【家族構成】[夫]57歳 会社員 年収800万円(額面)[妻]妻55歳 専業主婦
[長男]25歳(独立)[長女]24歳(独立)

使う時期が近いなら、安定と換金性を重視

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資産運用

定年を目前に控えた世代は、資金を使う時期も迫っているので、安定と換金性を重視した運用が基本になる。ただし、老後生活に突入してから10年ほどの生活費として取り崩しに堪える資金があるのであれば、残りの資金はある程度の利回りが期待できる資産運用も可能になる。

Fさんのケースもそれに該当する。年金受給見込み額と生活費の差額は毎月9万円。10年間で1300万円の取り崩しが必要になる。しかし、Fさんには総額2000万円の資産があるし、これから定年までにもう少し、資産を積み上げることが可能だ。これらを考えあわせると、70歳以降に使う予定の資金として、1000万円は、国内株式や海外債券で運用してもいい。

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保険

株式市場が低迷しているいまは、株式の比率を低めにするのが無難だが、もし、子どもに残す資産として考えるなら、さらに長期の運用も可能になるため、その分は株式の比率を増やす方法もある。

子どもが独立すれば生命保険もほとんど必要がない。また、葬式代などに充てる変額終身保険も保険料が高くなるため、新規に加入するのは有利とはいえない。葬式代は貯蓄から負担すると考えれば不要になる。

●70代で使うお金は海外債券で積極運用

[資産運用]10年以上先に使う資産は、株式や債券を組み合わせて運用効果を狙いたい。ただ、現状は株式市場が回復するまでの期間が見通しにくいので、比率は抑えめに。多くの資産を円で保有しているので、債券部分は海外債券ファンドを利用し、通貨分散効果も狙いたい。国内株式の部分は、コストが安く、市場の平均リターンが狙えるETFかインデックスファンドを利用するのがおすすめ。

[保険]2人の子どもがすでに独立しているため、生命保険は収入保障保険500万円前後と終身保険300万~500万円で十分。ただ、これから加入するのであれば、保険料が高くなるので、共済などを検討するか、いざというときは貯蓄で賄うと割り切るなどの判断も必要。

【POINT】趣味を兼ねて株式のネット取引に挑戦も◎/定年後は時間に余裕ができるので値動きをこまめに追うことが可能になる。もし運用そのものに興味があるなら、老後は趣味を兼ねて株式投資に挑戦してみるのもいい。ただしリスクが大きくなりすぎない金額にすること。投資を通じて社会とのつながりが保てるし、株主優待などの楽しみもある。応援したい企業を見つけて、株式を買うのもいい。

(※図版は取材をもとに編集部作成)

(向山 勇=編集・構成)
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