パチンコ業界は変革期にある。市場規模はここ数年、30兆円弱のまま推移しているが、来店客は10年前(年間2900万人)に比べ、1000万人以上も減少。つまり、「軽く遊んでいく」客は激減し、ヘビーユーザーばかりといった状況に陥っているのだ。

店内もトイレもパチンコ屋というより、都市ホテルのような内装。

店内もトイレもパチンコ屋というより、都市ホテルのような内装。

そうしたなか業界各社は新しい客層の開拓に力を入れているのだが、徹底したサービスの向上で新規客を呼び込むことに成功している会社がある。それが正栄プロジェクトだ。同社は北海道を本拠とするパチンコチェーンで、「笑顔の接客」を標榜している。来店したすべての客に優しく微笑みかけたり、新しい台の遊戯方法を懇切丁寧に教えるといったサービスを行っているのだ。そして、同社のサービスを支えているのが毎日の朝礼で行われている「笑顔体操」なのである。

正栄プロジェクトは1992年に設立された会社で、売り上げは2165億、従業員数1330名。同社の売り上げは北海道では北海道電力、NTTドコモ北海道に次ぐ規模となっている。

代表取締役の美山正広氏は「笑顔とサービスが業績を左右する」と言う。

「私の父も1軒のパチンコ屋をやっていました。当時はサービスなんてことはまったく考えていなかった。従業員はくわえタバコにサンダル履きでホールを歩き回り、イカサマをしないように客を見張っていた。従業員ではなく監視員だったのです」

彼の代になってから、経営方針を変えた。その結果、店舗数は劇的に増えた。店を訪ねると、若い従業員たちが笑顔で出迎え、いらっしゃいませと会釈をする。美山氏は語る。「『オレはこのホールで楽しく働いているんだ』と胸を張って言えるような会社にしたつもりです。それがあるから社員も笑います。ただ笑えといっても誰も笑顔にはなりません。待遇を良くして会社のイメージを上げないとダメです」。

(本田 匡=撮影)