【松田】たしかに先生方と徹底的に話し合うというアプローチもあったと思います。ただ、そうやって現場を変えていくより、自分の理想とする学校をゼロからつくるほうがいいと考えました。学校を運営するには、リーダーシップやマネジメントが必要。それらを学べる日本の大学院はほとんどありません。アメリカの大学院を調べたら、わくわくするカリキュラムやシラバスがたくさんあった。英語は苦手でしたが、これしかないと思って留学を決めました。

2008年、ハーバード教育大学院に入学し、教育界の指導者を養成するスクール・リーダーシップ・プログラムを受講。留学してまもなく、TFA創業者ウェンディ・コップに出会う。

【田原】ハーバードの授業で何を学んだのですか。

【松田】専攻はスクールリーダーシップで、教育の分野に求められるリーダーシップを学びました。

【田原】教育におけるリーダーシップですか。ちょっとわかりにくいな。具体的にはどういうことですか。

【松田】たとえば子どもたちに10年後、15年後を想像してもらい、その社会で生き抜く力を身につけさせることも教師のリーダーシップの1つです。

【田原】そんな先のことなんて想像できるかな。1990年代、アメリカではものづくりがダメになって、みんな金融に行った。でも、リーマン・ショックで結局はダメになった。こんなことは誰も想像してなかったでしょう。

【松田】たしかに将来を見通すのは難しいと思います。

【田原】それは無責任だよ。本当は見えないのに「15年後を見ろ」と教えるのはインチキではないですか。

【松田】予測不能な社会になることを含めて、子どもたちにきちんと伝えていけるかどうかが大事だと思います。そのうえで、見えない社会の中で生き抜くための能力を身につけさせると。