保険の「チューリッヒ」といえば、自動車保険を思い浮かべる人が多いかもしれない。しかし、スイスに本拠地を置く同グループは、1996年に日本初のダイレクト専業の生命保険会社、チューリッヒ生命も設立している。昨年1月、その日本における代表者に就任したのが太田健自氏だ。同氏は、生命保険業界が直面する市場の変化に応え、新戦略の加速へとリーダーシップを発揮している。

チューリッヒ生命
1872年にスイスで設立されたチューリッヒ・インシュアランス・グループは、現在170カ国以上で保険事業を展開している。グループの一員であるチューリッヒ生命は、1996年に日本初のダイレクト販売専業の生命保険会社として日本支店を開設した。

太田健自●おおた・けんじ
1963年生まれ。米国スタンフォード大学大学院経営修士課程(MBA)修了。1985年ソニー入社。その後、外資系経営コンサルティング会社、米国系保険会社を経て、2012年より現職。

私たちチューリッヒ生命の企業理念を超えて、コアバリューともいえるのが「ケアとイノベーション」です。「ケア」は、お客様に対する私たちの行動様式そのもの。ご加入の検討段階から万一の際の保険金お支払い時まで、お客様と同じ目線に立ち、さまざまな思いに寄り添い、ストレスを感じさせない的確な対応に努めています。

ダイレクト販売を強みとする私たちの「ケア」の起点はコールセンターです。ケアスタッフと呼ばれるオペレーターたちは、必ずしも保険に詳しいわけではないお客様と、親身な姿勢で分かりやすく対話します。一般的にコールセンターはコストセンターとみなされ、少なからぬコールセンターが応対件数などにノルマを設定しています。しかしそれでは、お客様本位の応対ができない。そこで私たちはノルマなどを設けず、お客様サイドの生産性と満足度の向上を目指し、「電話がつながりやすい」「お客様が必要なだけ時間を費やす」「お客様の用件が1回の通話で完結・解決する」ことを優先課題としています。

あるとき私に、ケアスタッフの一人がこういいました。「お客様とともに泣き、笑うことが自分たちの仕事です」。この言葉こそが当社の「ケア」を象徴していると思います。

もう一つ掲げている「イノベーション」とは、保険商品や販売チャネルの革新と創造です。チューリッヒ生命は、ニッチプレーヤーを自認しています。商品開発で追求するのは、現役世代の皆様を主なターゲットに定め、市場で多くの商品に見られる画一性を排し差別化の要素を強化した、新しいタイプの保険です。

販売チャネルについては、現在は主力となった大型代理店チャネルに加え、20~40歳代への普及率が9割以上に達したインターネットも活用するなど多様化に努め、利便性と即時性の向上を図っています。