「世の中には多種多様な食品添加物があり、健康への悪影響も報告されています。その一方で加工食品を安全に家庭に届けるために、食品添加物が重要な役割を果たしているのも事実。使わないほうが、かえって食の安全が脅かされるという側面もあるわけです。ただ、家庭で料理をつくれば食品添加物を避けられますから、特に子供が小さいうちは、あまり外食調理品に頼らないことが望ましいでしょう」

しかし、外食調理品がここまで身近にあふれている現代において、まったく利用しないというのは、どだい無理な話。そこで武見先生が提案するのは、使用の頻度を減らすこと。「栄養バランスが偏っていたり、食品添加物が入った食べ物を取ったからといって、すぐに悪影響が出ることはありません。そういった食事が長く積み重なることで初めて健康に影響が出てくるのです。ですから、頻度を減らせばいいのです」

どのくらいの頻度なら大丈夫なのか。武見先生の感覚では、「せいぜい週に1、2回くらい」が目安。基本的には毎日、手づくりを前提に努力する。だが、無理をしすぎて息切れしないように、週に1、2回くらいは手抜きをさせてもらう。

それがかなわない場合には、利用の仕方を工夫する。1男1女の子育てをしながら研究活動を続けてきた武見先生は、忙しいときには総菜を買って食卓に出すこともあったという。しかし、利用する際は何かしら一手間を加えるようにしていたという。また、出すときには買ってきたままの容器では出さず、必ず皿に盛り付けることも大事。

「とんかつならブロッコリーやキャベツ、空揚げなら大根おろしと切ったレモンを添えてみる。サラダもドレッシングの味が濃いと感じたら、キュウリやブロッコリー、ニンジンなどを切って加え野菜量を増やして、味を薄めるように調整したり、おみそ汁だけはつくって出したり。一から手作りするよりは楽ですし、栄養バランスも改善できます」

このように手を加えることには、栄養バランスを整える以外にも大きな意味があるという。それは子供の“食事観”を健全に育成することだ。どんな内容の食事がいいか子供にイメージさせるとき、日本の伝統的な食文化である「一汁三菜」を思い浮かべるか、菓子パンと清涼飲料水のセットを思い浮かべるかでは大きな違いがある。