余剰人員の活用も容易だ。熟練の技術を身につける必要がなく、初心者でも簡単な研修をすれば工場で働くことができる。

政府の補助金を受けられることも追い風になっている。農林水産省では、初期投資の半額を補助している。初期投資は、小規模なものでは700万円程度、500平方メートル規模だと1.5億~2億円程度であり、半額の補助金は大きな魅力だろう。

とはいえ、植物工場単体で収益を上げるのは厳しいのが現状のようだ。現在黒字の工場も、黒字転換までに10年前後かかっている。いま導入すると、黒字化に7~8年はかかるだろう。

理由のひとつは、販路の開拓に苦戦していること。安定的な売り先が確保できず、稼働率を上げるのが難しい。

植物工場で生産されることが多いレタスを例に取ると、価格は年間平均で露地栽培のものに比べて1~3割程度割高。露地ものが安い夏場は特に、価格競争力がない。

しかし、クリーンな環境で生育するため洗う手間が要らず、日持ちする(場合によっては20日)という特徴は、洗浄コスト圧縮や歩留まり向上につながる大きな強み。加えて、1年を通じて安定的に供給できること、注文に合わせて計画供給が可能な点は、レストランやコンビニ、弁当屋、総菜屋などの外食・中食産業には大きな魅力だ。

バイヤー約80社を対象にした調査によると、スーパーなどではそれほど関心が高くなかったのに対し、外食・中食産業では、「いまは使っていないが機会があれば使いたい」との回答が2割以上に上った。現在の市場シェアは1%にも満たない「工場産野菜」だが、成長の余地がある事業といえるだろう。

(構成=大井明子)