そして、華僑が優良な不動産をはじめとする有望な投資対象を探す際に大切にしているのが華僑同士のネットワークであり、そこで最もものをいうのが「信用力」なのだそうだ。

「借金の返済期日の約束を破るなど、信用を1度失ってしまうと回復は難しく、華僑の世界では生きていけなくなります。ですから彼らのモットーは『借りをつくるよりも貸しをつくれ』。借りをつくると、どうしても弱い立場になってしまう。逆に貸しをつくって信用を築き上げておくと、後で思いがけないプレゼントが返ってくることがあるからです。これはユダヤ人の『ゴールデンルール』と同じ考え方です」とホーさんは語る。

「自分のサイフの中身を他人には見せるな」という家計に関する華僑の合言葉もある。その国々で少数派の立場である華僑は、何か事があるたびにスケープゴートの対象にされてきた歴史を持つ。それゆえ、自ら金持ちであることをひけらかすことで、周囲から無用な嫉妬や反感を買うリスクを回避しているのだ。

同じような意味合いからなのか、華僑の財閥であっても、本社はみすぼらしいビルだったりすることが珍しくない。もちろん華美なオフィスを構えていても何のお金も生まず、死に金となってしまうのを嫌がっている面もあるのだろう。

また、華僑の夫婦間ではお金に対する立場はあくまでも対等であり、自分の収入は夫婦別々の銀行口座で管理していることが多い。日常生活に必要なお金は、そのなかからお互いに補填をしていく。

「無駄遣いをしていないからなのか、華僑の家庭で家計簿をつけているようなところを見たことがない」と樋泉教授はいう。