2013年10月4日(金)

カマス――踊る脂、濃いうまみ。秋の一夜干しはこれで決まり!

dancyu 2012年11月号

福地享子=文
【つくり方】
開いたカマスを3~4%の塩水に30~40分浸ける。好みで、酒少々を加えても。一夜干しというぐらいだから、カラカラには干さない。焼くときは、身から。身側7、皮側3の割合で焼く。

天高く、カマス肥ゆる秋がきた。

カラリと乾いた空気、風はヒンヤリ肌寒く。こうした秋の1日を、私はカマス日和と呼んでいる。カマスの一夜干しに絶好なお日和、というわけだ。

カマスには赤カマスと青カマスの2種類があり、普通にカマスといえば、赤カマスをさす。青カマスは、身質が水っぽく、関東では水カマスと呼んでいるくらいだが、赤カマスにしても、水分は多い。しかし、干す、という一手間で、格段においしくなる。フライもやった。煮つけも、ムニエルも。でも、カマスは、だんぜん一夜干し。ことに手づくりの美味しさときたら。市販のそれとは、一線を画す味がする。

ことに今の時季。炙るとほどなく、腹のあたりにジュージューと脂が踊り、それだけで生唾が出そうだ。味は上品ながら、決して淡白ではなく、うまみは濃い。そもそもが、小魚やエビ、カニなどの甲殻類好きの肉食性であり、うまみをしっかり宿している魚なのだ。

しかし、この都会でカマスの一夜干しをつくるには、それなりの注意が必要である。注意であって、技は無用。

下ごしらえは簡単だ。魚屋さんやスーパーでカマスを見つけたら、「干物用に開いて」のひとことですむ。

塩をする。これもどうってことない。てっとり早くやるなら、全体に薄く塩をまぶすだけ。さらなる味を求めるなら、海水程度の塩水に酒少々を加えたなかにしばらく浸す。このほうがおすすめだ。

私は、たいてい2尾を干すので、小さいバットにカマスの厚み半分が浸るくらいの塩水をつくり、酒大さじ3ほどをプラス。そこに腹から浸して20分、ひっくり返して20分。これで全体に塩味はなじむし、かつ酒の量もセーブできる。主婦は、こういうとこに細かいのだよ。

そして干す。これが、要注意である。ザルに広げて外に出しておいたら、たちまち猫にかっさらわれた。ならばと、ベランダの物干し竿にぶら下げた。洗濯ばさみで尾っぽをはさんで。するとどうであろう。羽音すさまじくカラスの襲来。宙に舞いながらカマスをくわえるや、悠然と立ち去ったのである。

かくして私のとっている手段は、ザルにカマスをならべると、目の粗いザルでふたをして、輪ゴムで留める、という素朴な方法。干物つくり用の網籠が売っているけど、小動物ごときに負けて買う、というのが腹立たしい。

夕方から干し、夜風にあて、爽やかな朝風で仕上げる。取り込むのは10時ころ。日中の紫外線はお肌同様、魚にもよくない。さらに冷蔵庫で丸2日ぐらいおくと、塩味が丸くなり、味もこなれてくる。

この連載記事のバックナンバー
トップページへ戻る

福地 享子

かつて女性誌の編集者、その後、築地の鮮魚仲卸「濱長」の看板ネエサンとして大活躍。現在は築地の書庫「銀鱗文庫」役員。ここを拠点に、築地を走り回っている。