――初めての海外での指揮です。それもアジアの国で。サプライズは?

「イタリア人は意外と日本のことを知りません。日本に来たことのあるイタリア人が少ないので情報に乏しいわけです。例えば、イタリアにいたとき、日本のコトバといえば“さよなら”と聞いていました。実際、3年住んでいますけど、“さよなら”というコトバを2回しか聞いたことがありません。

最初は8月30日に日本に来たんですけれど、その日は暑くてね。レインボーブリッジを通っているとき、ちょうど東京の高層ビルが並んでいるのが見えたんです。それが非常にキレイな形に保たれていました。ミラノだとビルが薄汚れているんですけれど、東京はキレイなビルが並んでいて、きのう誕生した街じゃないかという印象を受けたことを覚えています。すごくキレイだなあ、というサプライズでした。

イタリアなんかも、世界の国々と比べると、比較的秩序が保たれている国だと思うんですけれども、やはり日本に来て思ったのは、非常に安全で、清潔感があって、しつけが行き届いているというイメージを抱きました。テレビゲームの世界にいるような感覚にしてくれるのです。ま、なんというか、外見ですよ、外見。実際、ビル街の中でみなさんが何をされているのかわからないんですけれど……」

――二面性ですか。そんなサプライズの連続で3年。監督自身はどう変わりましたか?

「個人的には経験の部分ですね。より経験値が上がったと思います。より状況を深く知ることができるようになりました。日本に来てよかったなあ、と実感している毎日です。きのうの夜も日本に連れてきたスタッフ陣とまさにその話をしていました。日本に来てよかったなあって」

――“よかった”とは、どういった意味でしょうか?

「スタッフと話をしたのは、日本は地理的にはアジアに属しているんですけども、まあ、実際の生活内容とかお国柄を見てみると、アジアというよりも、どこの大陸にも属さないような唯一無二の国ではないかと思います。例えば、アジア大陸をずっと旅して、アジアをよくわかっている人がいたとしても、日本に行かない限り、アジアのすべてを語ることができないと思っています」

――サッカー選手の気質はどうでしょうか。一般的に勤勉でおとなしいという評が多いようですが。

「おとなしいというところは、一概に言えないところでしょう。どの国のチームも一緒です。おとなしい選手がいれば、おとなしくない選手もいるわけです。就任当初も、日本の選手は創造力に欠けるとか、ゴールに向かう姿勢が足りないとか、いろんなことを言われたけれど、自分の目で見たらそんなことはなかった。結局、ゴールをたくさん獲れるチームになりました。最近は失点も多いんですけれど……」