野地秩嘉(のじ・つねよし)
1957年、東京都生まれ。早稲田大学商学部卒業後、ノンフィクション作家に。人物ルポ、食や美術、海外文化などの分野で活躍中。『サービスの達人たち』『なぜ、人は「餃子の王将」の行列に並ぶのか?』ほか。『TOKYOオリンピック物語』でミズノスポーツライター賞優秀賞を受賞する。

現在、書店の様々な分野に野地秩嘉氏の本は平積みになり、棚に入っている。デビュー作でテレビドラマにもなった『キャンティ物語』は文庫本の棚に、『成功はゴミ箱の中に』はビジネス書、『高倉健インタヴューズ』は映画・芸術書コーナーに平積みになっている。本が売れない時代、新刊本がすぐ返品されてしまう状況の中、これは稀有なことだ。野地氏の最新刊は『プロフェッショナルサービスマン』。

「世の中に贅沢ってたくさんありますよね。美味しいものを食べる、豪華なホテルに泊まる、高価な宝石を身につける……でも究極的に一番何をして生きていきたいかと問われれば、“気持ちよく生きていきたい”と僕は考えます。ものではなく、いいサービスと出合う、つまりいいサービス業の人に会うことが最高の贅沢だと感じています」

本書は「こうすれば成功する!」「この方法で利益は倍になる!」といったハウツー本ではなく、その精神性と行動力において、サービスの達人となり、今も日々、切磋琢磨を繰り返し、さらに上のサービスの領域に上がろうとしている、7人それぞれの“物語”である。「ベンツの日本一セールス」「保育園業界の革命児」「デパ地下・とんかつトップ販売」等々、仕事への姿勢、戦い方、流儀を野地氏は決して誇張せず、丁寧に、そして感動して描いている。

「共通しているのは勤勉だということです。世の中で成功している人は皆、間違いなく勤勉な人たちです」「日本のサービスは世界一だと思う」

私は年内に、書店にて野地秩嘉氏の著作のみ集めてフェアをおこなうことを、画策している。

不況に悩み、閉塞感に苛まれても、考え、立ち向かっていく“ひたすらに、ひたむきな”彼ら彼女たちの物語をたくさんの人に届けたいから。本書の最後、野地氏のこの言葉が心に残った。

「プロフェッショナルサービスマンの真髄に触れ、感激してこの本を書いた。私は彼らのいる時代の日本に生まれて幸せだと思っている」。

(岡倉禎志=撮影)
【関連記事】
よもやの不祥事で断行した「顧客の信頼」回復策 -サイゼリヤ
なぜ帰宅難民2000人を無料収容したのか -帝国ホテル
「帰ろうと思う前にもう1軒」 -プロフェッショナルサービスの名言(1)
舞妓が教えてくれる良質な日本式サービス
なぜ「レストラン閉店後の利用」にも応じるのか -ザ・リッツ・カールトン東京