フィクションのジャンルでは、浅田次郎さん、池波正太郎さんの小説が目立ちました。また、ハードボイルドを好む方もいて、当時人気だったアメリカの推理作家、ロバート・B・パーカーの探偵小説『スペンサー・シリーズ』を愛読している方が多かったのを覚えています。こうしたフィクション小説は、オフモードの機内でリラックスするための必需品なのかもしれません。

仕事のヒントとなるような本の場合には、気になるページに折り目をつけたり、ラインを引いたり、熱心に本の内容を紙にまとめられたりする姿がとても印象に残っています。

到着時に「本を処分して」と、お願いされることも多いのですが、その際「ここの部分が君たちの仕事に役立つよ」といったアドバイスや、要約したメモとともに紙袋にどっさり入った本を渡されたことが何度もありました。要約を読めばその本がどんな内容なのかひと目でわかり、興味のある本をみんなで分けて持ち帰り、勉強したものです。

私がお客様から頂戴した本の中でも、特に記憶に残っているものがいくつかあります。池波正太郎さんの『男の作法』は、日常のさまざまな場面において「男はこうあるべき」が描かれていますが、女性にも「なるほど」と通じる部分も。今でも時折ページを開くほど、大切にしている1冊です。

また、外食企業のオーナーであるお客様からいただいた食通本『美味礼讃』は、“芸術としての料理”が語られており、単にグルメを楽しむだけでなく、ビジネスのヒントにされていたのではないかと思います。