経営体制の変更と軌を一にして、次々に新サービスがリリースされ始めた。野菜を定期宅配する「やさい便」、漢方薬膳サイトの「漢方デスク」、料理教室の検索サービス「クックステップ」などである。

経営体制の刷新について石渡COOに質問すると、こんな答えが返ってきた。

「佐野はカリスマ的なアントレプレナーですが、佐野が打ち出すコンセプトはすぐには理解が難しい。何年か後に『そういうことだったのか』とわかるのですが、それまではみんな理解できないまま走ることになる。クックパッドはそんな会社だったのですが、現在の規模になるとそれではきついと正直、私は思っていたし、佐野もそう思っていたんでしょう。ある日、本人が『穐田さん、社長をやってくれませんか』と言い出したんです。すごい、と思いましたね。15年間自分が育ててきた会社を突然、まったく違うタイプの経営者に委ねようというのですから。普通の創業経営者にはできないことです」

プロ野球ファンなら「石渡進介弁護士」という名前に見覚えがあるかもしれない。04年のプロ野球再編問題の際に選手会側弁護士として活躍した人物で、現在も積極的に提言を行っている。

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沿革・月間利用者数推移

「社外取締役を4年くらいやった頃、佐野から『常勤でジョインして』と誘われました。発想がおかしいですよね、普通の人は事務所をやっている弁護士を誘いませんから(笑)。ただ、私もそういう方向に舵を切りたがっている匂いを出していたのかもしれません。弁護士という職業では『こうやったほうがいい』と思っても、顧客にそうしてもらえないことがけっこうあります。自分で決めたい、そんな匂いを佐野が感じ取ったのかもしれませんね」(石渡COO)

佐野氏から石渡COOへの要請は「組織を見てほしい」。こうして穐田代表が事業を、石渡COOが組織を見るという体制が整えられたのだった。