2013年9月6日(金)

サンマ――青刀、一本立ち、大黒。庶民の魚もブランド化

dancyu 2011年10月号

福地享子=文

天高く、ですね。馬が肥えるのは見たことないけど、サンマだったらある。

【つくり方】
サンマ2尾の頭、ハラワタを取り除いてぶつ切りにする。圧力鍋に入れ、醤油大さじ1/2、味醂大さじ1、実山椒の水煮大さじ1、水少々を加え、7~8分ほど中火で煮る。骨まで柔らかくなる。一晩たったくらいが美味。

築地の店頭に初物サンマがやってくるのは、七夕が過ぎてすぐ。初物の例にもれず、細くて脂ののりもまだまだで、大きなサヨリといったあんばいだ。それが、8月の声を聞くと、大きくなり始め、9月に入って気がつけば、頭がやけに小さくなっている。いや、頭が小さくなったのではなく、首のつけねから尾っぽまで、ズングリムックリ太く大きくなったせい。呆れるほどの成長ぶりだ。

サンマ漁は、資源保護のため、出漁する船の大きさで、解禁日が決めてある。初物は、試験操業によるもので、刺し網漁でおこなわれる。実際のサンマ漁は、棒受網漁といって、夜間、船の片側に突き出した棒に明かりを照らし、その明かりに誘われてやってきたところを、網で一挙にすくう。「サンマもオラと同じ。ネオンにフラッとするだ」と、サンマ漁師さんからは聞きましたね。

その棒受網漁業解禁日が7月15日で、まずは5トン未満の船から始まる。それ以後、しだいにトン数が大きくなり、8月のお盆を過ぎると、100トン以上の船が解禁に。本格的なシーズンに入る。

9月のサンマの水揚げは、釧路、厚岸(あっけし)、根室・花咲と北海道が中心だ。数年前にシーズンまっただなかの3港を巡ったことがあったけど、すごかったなぁ。

抜けるような青空にカモメをいっぱいに従えて、100トン以上の船が入ってくる。魚倉にはギラギラ輝くサンマがぎっしり。クレーンを使って大きな網で引き上げたサンマは、大型トラックに移される。どこぞへ運ばれるかと思ったら、そのまま静かにセリ場へ入場。トラックごとセリである。それぐらいとれるのだ。

もっともこれでは傷みやすいし、値段もとれない。ことにサンマを刺し身で食べるようになって以来、高鮮度保持のためにどこの港もしのぎを削っている。船にはシャーベットアイスを搭載、船上でこのシャーベットアイスや滅菌海水といっしょに箱詰めして出荷してくるのだ。箱から取り出すと、尾を持ってピンと立つぐらいイキがいい。「青刀」「一本立ち歯舞(はぼまい)さんま」「大黒さんま」といったブランドネームもつけられ、プレミアムなサンマとして定着している。

刺し身にまで料理の幅を広げたサンマ。でも、やっぱり秋の気配濃厚になると、あの煙にいぶされたサンマのおいしさは捨てがたい。それと私的にはもう1品。実山椒といっしょに骨まで柔らかく煮た有馬煮だ。どちらもご飯がすすんでしようがない。天高く。サンマといっしょに肥えてどうすんだと、わが身を叱りつけるのだが、どうにも止まらない。

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福地 享子

かつて女性誌の編集者、その後、築地の鮮魚仲卸「濱長」の看板ネエサンとして大活躍。現在は築地の書庫「銀鱗文庫」役員。ここを拠点に、築地を走り回っている。