【大前】その分、休み休みで行ける。

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今回は、標高5300メートルにあるベースキャンプから、頂上に行くまでにキャンプを2つ増やして、「ゆっくり確実に登山する」ことを心がけた。8500メートルのC5では、お茶会を実施し、最終アタックに向けて“平常心”を保った。

【三浦】今の若い登山家は足を延ばしすぎるんです。今年も9人亡くなっています。登った行程はエドモンド・ヒラリーとテンジン・ノルゲイ(エベレストに人類初登頂を果たした登山家とシェルパのコンビ)、それから植村(直己)さんと同じなんですが、僕のやり方だとクレバスに落っこちたり、雪崩に遭いにくい。

【大前】それでも、普通の人はそれを「遊び」とは言わない(笑)。

【三浦】8500メートルのC5(キャンプ5 ここから頂上にアタックする)でお茶会をやりましたからね。お茶の作法なんて全然知らないのに。

【大前】お茶を点ててる写真、見ましたよ。あれ、表の気温は何度ですか?

【三浦】マイナス25度。でも、絶対8500でお茶会をやろうと決めてたんです。だから茶筅から何から全部持っていった。本当は100グラムでも軽いほうがいいのに(笑)、「お父さん、何でそんな無駄なもの」って豪太(今回同行した三浦氏の次男でプロスキーヤー・冒険家、医学博士)や他のメンバーからは言われました。

でもね、すごく効いた。8500メートルの高さでは交感神経が優位になって、興奮して眠れなかったり、落ち着かなかったりするんです。それがお茶を飲んでいるうちにスーッと心が静まって。

【大前】最終アタックを前にして、落ち着けた。

【三浦】そう。「よし、行ける」「やろう」って気になる。

【大前】そこで1泊したんですか。

【三浦】1泊しました。夜中の12時に起きて、2時半に出発です。

【大前】まだ真っ暗だ。

【三浦】だから、ヘッドランプを付けて。先に向かう登山隊もいて、その日は50人、頂上に着いたんです。先行した連中のヘッドランプがどんどん頭上を進んで、満天の星と溶け合っていく。宇宙を歩いて登っているような感覚でしたね。