まず表情筋、舌、顎の関節をほぐす

そもそも生まれつき「あがり症」の人などいません。必ず過去のどこかで自尊心が傷ついた体験があったはずです。小学校での朗読で失敗した、人から発声を笑われたなど、自分でも忘れているようなことかもしれません。それでも人間は常に過去の体験に基づいて未来を予測していますから、「過去もこうだったから未来もこうだろう」と予測してしまうのです。

これからご紹介するのは自宅でできる簡単なトレーニングですが、「あがり症」でない方にとっても有効ですので、ぜひ試してみてください。

まず、声を発する器となる口や表情筋を鍛えます。なぜ赤ちゃんはうまく発声できないのか。それは言葉を知らない以上に表情筋が鍛えられていないからです。同様になぜ老人はモゴモゴとした喋り方になるのかといえば、加齢で表情筋が衰えるからです。若いうちはまだ何とかなっても、30歳を過ぎれば確実に喋り方に影響します。凝り固まった表情筋、舌、顎の関節をほぐし、自在に発声できる器を鍛えます。

大きく口を開けて「あうあうあうあう」と言ってみてください。滑らかに発声できればOKですが、もし顎がガクガクする場合は、顎の付け根と頬骨の下のくぼみを30回ほどグルグル押してください。どちらも相当痛いですが、それこそ筋肉が凝りリンパが滞り、明瞭に喋れなくなっている証拠です。

次に声帯を開きましょう。これは声を震わせずにはっきり喋る練習です。両足を肩幅に広げ、1番低い声で「あー」と30回発声してください。

舌足らずな話し方や、言い直しを改善するためには、舌を柔らかくします。舌を口の中で上向きに丸め、上下の歯で優しく押さえるように何度も噛んでください。最初はゴリゴリとしますが、次第に滑らかに動くようになります。これは滑舌をよくするためのトレーニングです。

最後に会話のリズムを整える練習もします。実は「話がうまい」人とは、整ったリズムで喋っている人のことなのです。妙に早口だったり、スピーチ中に「えー」「あー」と間投詞が多い人は、内容以前に話のリズムが乱れていることから「話がうまくない」という印象を与えがちです。脳が安心している状態とは、一定のリズムで心臓が脈打っている状態のこと。言葉のリズムが安定していることで、聞き手もそして本人の脳も安心感で満たされるのです。