微細加工で軽薄短小。米・中よりも優位に

――設計・開発の世界でICTを駆使すれば、差別化ができますか?
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図1 日本の強みは「開発」にある

【黒川】できると思います。「ものづくり」を上流から「新しいビジネスモデル」「知的財産や標準化される技術」「開発」「生産」の4段階に分け、日本と米国、中国がグローバルにどこに強み、弱みがあるかを比べると、わかりやすいでしょう(図表1)。中国はコストが低く大規模にある労働力を武器に、「世界の工場」と呼ばれるほど生産段階に強みがありますが、知的財産や新たなビジネスモデルの構築ではグローバルな存在感はありません。一方、米国はビジネスモデルの創造や知的財産の構築・標準化に秀でていますが、国内における開発や生産の体制は大幅に縮小されました。日本は、その中間にあり、高度な技術力を背景に強い開発力を持ち、確立されたビジネスモデルのなかでの製品の洗練や微細加工による軽薄短小化などで優位にあります。

こうした点から、開発と生産をひとくくりにした、自動車のバーチャル試作車のような「ものをつくらないものづくり」のプロセスの導入が、日本には有効です。それは、上流からの設計・開発の情報を生産過程で共有・連携できるICTの導入や、ノウハウを継承する仕組みをICTで構築するといった「スマートな仮想実機・仮想生産ライン」で実現できます。さらに、米国のような知的財産の確立へと広げていけば、言うことはありません。

――ただ、設計・開発のグループと生産グループの連携は、古くからメーカーが抱えてきた宿題です。

【黒川】一般的には、1つの会社で働く期間が長いという日本の特徴から、グループ間の交流つまり異動がさせやすく、相互に蓄えてきた強みを生かし合いやすいとはいえます。ただ、いまの時代、企業の事業内容は10年単位で変化をしていきます。だから、若いときからそうした変化に積極的に応じていくようにしないと、違う世界へ交流したときに、持っているものが遠からず陳腐化してしまいます。社長時代にそのことを新入社員たちに伝え、積極性を促しました。