GTR法は保険適用だが、より侵襲の少ないバイオ・リジェネレーション法は保険外治療になる。治療方針は主治医と十分話し合ってから決めよう。冒頭のAさんは残念ながらすでに重度であったが、歯磨き指導を受け、かみ合わせの高さを調節しながら再生治療も進行中だ。主治医に「内臓疾患がなかったことが幸いだった」と言われたという。同程度の患者は、糖尿病など、内臓疾患を抱えていることが多いそうだ。そう、歯周病の本当の怖さはここにある。単に口腔内の炎症にとどまらず、さまざまな病気の引き金になったり、持病を悪化させたりする特質があるのだ。

「歯周病菌は唾液に混じって気道に流れたり血液に入ったりして、全身に拡散され、さまざまな疾患を引き起こす原因になるのです」と中川医師。特に深い因果関係が明らかになってきたのが、糖尿病である。

「糖尿病は血管をもろくし、細菌の感染に対する抵抗力を弱め、歯周病菌を増加させるため、重症化しやすい。逆に歯周病が糖尿病を誘発する可能性もあるのでとにかく注意が必要です。歯周病は糖尿病の6番目の合併症ともいわれています」

2つの病は非常に密接な関係があるため、歯周病の治療をすると血糖値が改善されるということもわかってきている。糖尿病を抱えている患者は、内科医師との連携も必要になってくる。

ほかにも呼吸器感染症や敗血症、誤嚥性肺炎、動脈硬化、脳梗塞、心臓疾患、皮膚疾患、骨粗鬆症、認知症、関節リウマチ、妊婦の場合は早産や低体重児出産など、歯周病はありとあらゆる疾患に関与すると考えられている(図3参照)。「たかが口の中の炎症と侮らず、放っておくと怖い病気であることを、肝に銘じておいてほしい」(中川医師)。

きちんと口腔ケアをすることは生涯自分の歯で食べられるようにするだけでなく、全身の病気のリスクを下げることにほかならない。