仕事の「価値の進化」を見極めよ

さらに私にとってラッキーだったのは、経営コンサルティングという仕事の価値が時代の要請によって変化しつつあったことである。私が新米コンサルタントの頃は、コンサルタントの最大の付加価値はクライアント企業が思いもつかないような斬新でユニークな提言、すなわち「Something Unique」(奇抜なアイデア)を提供することだった。異質のアイデア、視点、切り口がとても重視されていた。

これは今でも重要な付加価値ではあるが、コンサルタントに対する期待は「Make-it-happen」(変化を起こす)に移りつつある。いくらユニークな提言を行っても、それが実現し、成果に結びつかなくては意味がない。アイデアや提言を実行に移し、結果を出すことへの助言、支援が今まで以上に求められている。

この変化は、仕事を選択する側から見ればきわめて重大だ。なぜなら仕事の価値の進化に伴い、求められる資質やスキル、マインドセットが大きく変わるからである。

「Something Unique」が主たる価値のときには、ユニークなアイデアを生み出せる発想力や構想力がきわめて重要だが、「Makeit-happen」へと進化する中で対人能力や折衝能力などコミュニケーションに絡む能力やスキルの重要性が高まっていった。

尖ったアイデアや斬新な構想を生み出すことにおいては平凡の域を出ない私だが、幸い、対人能力や折衝能力には少しばかり長けていた。その資質を活かして、私はなんとか生き延びることができた。

経営コンサルティングという仕事そのものはなくなっていない。しかし、仕事の価値そのものは大きく変わってきている。仕事の価値が進化すれば、求められる資質やスキルも変化する。

私の場合、幸いにも仕事の価値の進化が自分にとってプラスに働いたが、常にそうであるとは限らない。むしろ、過去において通用していたスキルや知識が陳腐化し、新たな成果を挙げられないことのほうが多いだろう。

たとえば、営業という仕事でも、過去に通用していた「御用聞き営業」のままではもう勝てない。顧客の先回りをし、顧客と共に考える「提案型営業」へと進化しなければ、営業での大成はない。

仕事で成果を挙げ続けるためには、仕事の「価値の進化」を常に意識し、自らの能力やスキル、知識を継続的にブラッシュアップしなければならない。「仕事師」として生きようとすれば、仕事の「技」を常に磨き続けることが不可欠である。

(写真=PIXTA)
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