9期連続して3億円超売った男

大和ハウス工業 集合住宅営業所 所長 草場栄治氏

「今も、何度も読み返してます」

大和ハウス工業北九州支店・集合住宅営業所の草場栄治所長がおもむろに引っ張り出したのは、科目ごとに色分けされた6冊のテキストだ。

「FPダイジェスト・上級編」と記された背表紙は白く擦り切れ、ページを開くとあちこちにマーカーや赤ペンの書き込みが。FP(ファイナンシャル・プランナー)1級(CFP)獲得までの2年間の苦闘を窺わせる。

草場氏は12年3月まで大阪中央支店で集合住宅を担当。前3月期は西日本で唯一、営業所の地区シェアをナンバーワンに押し上げ、社長賞を獲得した。

前期まで3年続けて過去最高の経常利益を上げている同社では、集合住宅で1期(半年)の売り上げが3億円を上回った者は表彰される。全営業マンの1割程度だ。草場氏は前期までの4年半の間に、「一戸建てでも難しい毎月1棟の成約を、集合住宅でずっと続けているペース」(広報企画室・天鷲克史氏)で、9期も連続してその中に入っている。

草場氏が使ったFP試験のテキスト(東京フィナンシャルプランナーズ刊)。

その草場氏のFP1級取得は、連続表彰が始まる直前の2008年。FPとしての業務能力が営業成績を押し上げたのだろう、と思いきや、「ある程度のご相談には乗りますが、FPとして仕事をすると別のコンサルティングフィーが発生することもあって、業務は抑えています」(草場氏、以下同)と意外なお答え。ではなぜ、わざわざ必ずしも業務に直結しているとはいえぬ資格の取得に挑んだのだろうか。

1995年に入社した草場氏は、大阪中央営業所(当時)に配属され、最初の3年は営業の基礎を徹底して叩き込まれた。

「地主さんに『空いてる土地にアパートを建てませんか』とお勧めするのが仕事。3年目まではずっと飛び込みで、呼び鈴をピンポン鳴らしてました。紹介は一切ナシで厳しかったですね」