たとえばインドは「頭脳こそ競争力の要」という考えに基づいて、「頭脳立国」を標榜し、科学技術で国家振興を図ることを国策にしている。その象徴がインド工科大学(IIT)だ。

IITでは政府から年間75億円という莫大な予算を計上され、論理的思考を徹底的に鍛える独自の教育を行っている。その結果、IITの学生は世界のトップクラスの企業から引く手あまたの状態となった。そればかりか起業家もどんどん輩出している。その象徴的な人物が世界的なIT企業であるインフォシスを起業したナラヤナ・ムルティ氏である。

私はムルティ氏と合弁を組み、ソフトウェアのオフショア開発を手がけたこともあるが、印象的だったのは彼独自の哲学だ。

彼は「ネールが唱えた『富の分配』を信じてきたが、存在しない富を分け合うことはできない」と言ったのだ。