産業の国際競争力に関する調査や研究は、対象となる国の産業の全体像を見落としていることが多い。たとえば、1970年代、80年代の日本の目ざましい成功を説明しようとする時、世界中の学者が、通産省の役割とか、総合的品質管理(TQC)の成果とか、ZD運動(欠陥ゼロの製品作り)の勝利とかいった説明に飛びついた。全員で社歌を歌って培われていく不気味な連帯感を勝因にあげる学者さえいた。ひとつひとつ見ていくと、どれもそれなりに一理ある。しかし、全体を合わせると、何も説明していない。私が何年も前から繰り返し指摘してきたように、驚異的な競争力を持っているのは日本ではない。日本にあるほんの一握りの産業なのである。正確に言うと、そうした産業の中の、ほんの一握りの企業だけである。