たとえば、いまの大学生に丸山眞男や小林秀雄の本を読ませたら、日本語で書いてあるにもかかわらず「難しくてまったく理解できなかった」と言う者が続出するだろう。彼らの文章が一見難解なのは昔の大学生にとっても同じだったが、それでも当時の大学生は、貪るように読んでいた。だが、これをもって単純に「いまの大学生の読解力が落ちた」と言えるだろうか?

確かに昔の知識人にとって必須とされた書物を、いまの大学生は読まなくなっている。しかし、彼らは昔とは違った新しい読解力を身につけているとも言える。

現代の大学生には丸山眞男を読み解く力がないかもしれないが、コンピュータ言語、インターネット言語という、昔の大学生にはなかった概念を用いての読解ができる。したがって、「昔に比べて読解力が下がった」とは言い切れないのである。