高齢期には、誰もが何らかの手助けを受けながら暮らすことになる。家族の安心を守り、健やかに暮らすために住まいをどう考えるべきか。高齢者の住み替えを支援するNPO法人シニアライフ情報センター代表理事の池田敏史子さんに、住まい選びのヒントを聞いた。

最期まで、住み慣れたわが家で暮らしたい──こう願う方は多いだろう。しかし現状の介護インフラで、要介護度が進んだ高齢者が一人暮らしをするのは、本人はもちろん、介護の担い手である家族の負担が大きく、現実には難しい。シニアライフ情報センターの池田敏史子さんは「元気なうちは、介護が必要なケースを想像しにくいもの。しかしやがて連れ合いが亡くなり、介護が必要になったとき、一人でどう生きていくのかを突きつけられます。そこで住み替えという選択肢が出てきます」と話す。

施設の種別ではなく
介護保険の種類を見る

池田敏史子●いけだ・としこ
NPO法人シニアライフ情報センター
代表理事
子供に頼らない高齢者の住み替えを 支援しようと、1992年、シニアライフ情 報センターを設立。20年間で1000件 近い施設に足を運び、高齢者の住ま いに関する情報提供や相談を市民の 立場で提供し続ける。

住まいと介護を提供する高齢者施設は多様化している。なかでも施設数が多く、広がりを見せているのが有料老人ホームと、2010年から登場したサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)だ。池田さんは「施設の概要や居室面積などのハード面は、有料老人ホームとサ高住、どちらも遜色ないケースがほとんどです。施設選びでは『介護保険の種類』に注目しましょう」とアドバイスする。

「高齢者施設は主に、住まいと介護を一括して提供する『施設系』と、住まいの場を提供して介護は入居者が選択する『在宅系』に大別されます」と池田さん。施設系に該当するのは、介護付有料老人ホームや認知症高齢者向けのグループホームなど。住宅型有料老人ホームやサ高住は在宅系にあたる。

「施設系では、職員が作成した介護サービスメニューに沿って、入浴や食事の提供など、必要なサービスを提供します。サービスを使っても使わなくても、料金は変わりません。一方、在宅系では、自宅と同じように、介護サービスを入居者の判断でチョイスできます。介護機器をリースしたり、デイサービスを利用するのも自由。介護にかかる料金はサービスの利用量に比例します」

人員配置にも違いがある。介護付有料老人ホームには24時間ヘルパーが常駐することなどが義務づけられているのに対して、サ高住の基本サービスは生活支援と安否確認のみ。一方、有料老人ホームと同等の介護体制を敷いている物件もあれば、夜間の人員配置などはなく一般的なマンションに近い物件もある。