若い世代でも自分に自信がある人ほど、大企業への不信感からベンチャーを選ぶという。彼らの仕事観には、LINEやフェイスブックなどのSNSが影響している。

近年の大学生の仕事観を考えるうえで、「仲間」は欠かせないキーワードです。彼らは好景気や物価の上昇を経験したことがなく、両親の仕事も自分の将来も不安定であるのが当たり前だった世代。さらに東日本大震災を経験し、日本の技術もマスコミも信頼できないことを実感しました。

彼らは、「欲しいものは誰もくれない。自分たちで生み出していかなければならない」ということを知り尽くしています。そんななかで、唯一自分たちの力だけで可能だったことが、誰かと手をつなぐことでした。

ただ、彼らの求める「仲間」とは、震災以降にもてはやされた「絆」とは少し異なります。日本社会はこれまで「絆」を「しがらみ」と呼び、どこか疎ましいものとしてとらえてきました。こうしたことを背景に、若者たちが直感的に意識したのが「しがらみのない人間関係」をいかにつくり上げるかということだったのではないでしょうか。彼らはLINEやフェイスブックといったSNSを活用することで、適切な距離感を保ちながら、柔らかなつながりを維持しているように見えるのです。

かつての若者は地方から都市、大学から企業と環境が変わるたびに人間関係のリセットを強いられてきました。しかし、SNSの時代の学生たちの人間関係は就職後も学生時代の延長線上にあり、それが「何かあったらよろしく」というソーシャルキャピタル(社会関係資本)として機能している。そのことは働くことや企業選択に対する意識にも影響を与えているに違いありません。

また、彼らは小学生の頃から『ワンピース』を読んで育ったワンピース世代でもあります。お互いのスキルも弱点も認め合い、仲間と一緒にいろんな冒険をして、何かを乗り越える環境がモチベーションになる。日本企業の競争相手が海外になればなるほど、そうした新しい形のネットワークや価値観はより重要になるはずです。この世代をいかに見守り、育てていくか。それは今後の社会の成長にとっても大切です。

関西大学社会学部教授 安田 雪

コロンビア大学大学院社会学専攻博士課程修了。東京大学大学院准教授などを経て、2008年より現職。著書に『パーソナルネットワーク』『ルフィの仲間力』など。