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過去5年での最高記録更新は必至か?

クドカンといえば小ネタだ。過去のドラマやマンガ、お笑い等のマニアックなギャグネタをセリフにてんこ盛りにする。視聴者らがツイッターでハッシュタグをつけてネタ解析を競い合うのが毎朝の光景ともなった。当然、ネタの意味がわからない年配層も多数存在するが「わかる奴にだけ、わかればいい」と開き直ったセリフがドラマ内で飛び出す始末だ。登場人物のイラスト化=通称“あま絵”がネット上に飛び交っている。江口寿史ら有名マンガ家も自主参加した。朝ドラを起点として“あまちゃんカルト”とでも呼ぶべきネットワークが広がりを見せている。

音楽担当の大友良英の仕事も重要だ。心弾む明るいマーチのようなオープニング曲が、このドラマのイメージを決定づけた。多種多様な楽曲が流れる『あまちゃん』は、心楽しい音楽劇だ。

ちなみに宮藤官九郎は宮城出身、大友良英は福島育ちと両者とも東北に縁がある。ドラマの起点は2008年で、やがて不可避的に2011年3月11日を迎える。ドラマの舞台となる東北の海辺の街はどうなるのだろう? 登場人物たちの運命は? 大震災への予感が、この明るいお笑いドラマを観る者に不思議な緊張感をもたらしている。東日本大震災から2年半近くが過ぎたが、いまだこの戦後日本最大の災厄を正面から描いたテレビドラマは存在しない。それがNHKの朝ドラで、宮藤官九郎の脚本によって実現するとは感慨深い。既に宮藤は震災の場面を書き終えたという。どんな形でそれが映像化され、視聴者らはどう受け止めるのか、このドラマの成否を分ける大きなクライマックスともなるだろう。