各国にある個別の会社ごとに納税をするが、決算はグループ連結で行う。結果、税負担を低く抑えたうえ、その分だけ最終利益に上積みした好決算を株主に示すことができて、企業にとっては“一石二鳥”なのだ。

ここでいうB国の役割を果たすのが、税金がゼロ、または税率が極端に低い「タックスヘイブン(租税回避地)」と呼ばれる国や地域だ。英領のケイマン諸島やマン島、ガーンジー島の法人税はゼロないし非常に低税率として有名だ。税率を決めるのはもちろん各国の自由。産業がない国や地域では、企業誘致を図るために税率を抑えることがある。

しかし、欧米では財政の悪化から増税や歳出削減などで国民の負担が増しており、租税回避を図る企業、それを容認している税制のシステムに対して批判が高まっている。グーグル、アマゾン、スターバックスなど多額の利益を挙げるグローバル企業が、軒並みタックスヘイブンを使って税負担を逃れていると報じられたことも大きな影響を与えている。

同じ経済取引ならば、誰がそれを行っても同じ額の税金を払うべきという考え方は、当然と思うはず。これが課税の公平性であり、今回の租税回避はこの公平性を害するものとして問題視され、対策の必要性が論じられているのだ。

メスを入れるとすれば、1つひとつの事例をチェックしていくしかない。前述の例では、A、B、Cの3つの国が、「親会社から子会社への販売価格は低すぎないか」「子会社から孫会社へ高く売りすぎでは」など、合同で調査する必要がある。移転価格の問題にも関連しうる話だ。とはいえ、調査をするにも数多くの壁に直面する可能性が高い。

ただし、ゆきすぎた租税回避は各国の国民のなかに大きな不公平感を生み、社会基盤の不安定化をもたらしかねない。今回のG8の取り組みも必要不可欠なものと考えられる。

(構成=高橋晴美 図版作成=ライヴ・アート)
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