「一生懸命やる人たちは救うべきだ」

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産業競争力会議の有識者委員の役割

【田原】産業競争力会議で、新浪さんは竹中平蔵さんや三木谷浩史さんと一緒に新自由主義を強調しているといわれています。

【新浪】2人があからさまに新自由主義を強調しているとは思えませんが、いずれにせよ、私の基本にあるのは、「一生懸命やる人たちは救うべきだ」ということです。そして、一生懸命やって失敗した人は再起できるようにサポートしてあげるべきです。逆にいえば、何もしないでのんびり人を頼ってばかりいる人は、最低限のサポートでいい。私は、新自由主義のすべてに、もろ手を挙げて賛成していませんよ。

【田原】なるほど、小泉改革は競争を煽ったけど、セーフティネットがなかった。自由競争はいいけど、負けた人間をどうするのかという点で、新浪さんの考えとは違うということですね。

【新浪】そうですね。日本はアメリカと違います。日本は、一緒に汗をかいた人なら結果が悪くても救ってあげる国でなくてはいけないのではないでしょうか。これはとても重要な点です。

【田原】もう1つ。僕は自民党をあまり信用していません。もし参議院選挙に勝ったら、改革を掲げながらも中途半端にしかやらないと思う。先日、安倍さんに聞いたら(改革を)「やる」といっていたけど、改革のために産業競争力会議はどうすればいいか。

【新浪】まず産業競争力会議の運営をこのまま続けていくことが大切です。ただ、全体のストラクチャー(構造)は変えたほうがいい。いまは会議の種類が多すぎて、内容もかぶっています。理想は、マクロ政策を議論する経済財政諮問会議を最上位にして、その下にミクロの具体的方針を議論する産業競争力会議が入り、さらにその下に規制改革会議や、グローバル人材の育成を論議する教育再生実行会議など、個別のテーマの会議がつらなるヒエラルキーです。このような形にすれば、もっと機能的になるかと思います。

【田原】産業競争力会議では有識者委員同士で意見が対立していますね。安倍さんは「もっとケンカしてほしい」といっていたけど、これはどうですか。

【新浪】私は、それでいいと思います。みんなが同じ金太郎飴のような意見では、会議をする意味がない。私は、独立取締役の議論においては、経団連と違う意見です。自分が背負っているのは経済団体ではなく、「For the country」。新陳代謝を促すにはコーポレートガバナンスが重要で、そのためには独立取締役の義務化が必要です。そこはしっかりと議論したい。むしろ問題は、議論した後に、何も決まらないことでしょう。大切なのは、必ず結論を出して前に進むこと。それには、政治的な決断が不可欠です。

【田原】対立の中から、安倍さんが何を選択し、決断するのかが大事ということですね。成長戦略がどのようなものになるか、注目しています。頑張ってください。

新浪剛史 株式会社ローソン代表取締役CEO
1959年、神奈川県生まれ。県立横浜翠嵐高校卒。81年慶應義塾大学経済学部卒業後、三菱商事に入社。91年ハーバード大学経営大学院修了(MBA取得)。2002年3月ローソン顧問就任。02年5月同社社長執行役員。05年社長兼CEO。13年5月から現職。
(村上 敬=構成 宇佐美雅浩=撮影 AFLO=写真)
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