桃はアジアの人に親しまれている果物。音の響きも色も可愛く感じませんか。昨年10月から就航している台北路線も好調で、利用者の60%は台湾の方。現地では「楽桃航空(ピーチの中国語表記)に乗って日本に行く」がブームになっています。日本生まれのピーチはアジア人の誇りに訴えかけているんじゃないかな。

関空-ソウル線を日帰りで利用するお客様が少なくないことにも驚きました。ソウルに12時間ほど滞在できるので、食事を2回取って、買い物やエステを楽しむには十分だというんですね。ほかにも介護や就活など、さまざまな用途をお客様自身が開拓している。新しい消費行動を生んでいるLCCは必ず日本に根付くと確信しています。

それだけに、エアアジア・ジャパンのエアアジアとの提携解消のニュースは残念でなりません。世界には成功しているLCCも多いのですが、こういう報道があると、「やっぱりLCCはダメなんだ」と、LCC全体がネガティブにとらえられてしまう。将来的にはピーチと統合するという一部報道もありましたが、事実無根です。制約の多い成田空港はLCCの拠点としては考えられない。10月27日から関空-成田線を就航しますが、成田は単なる就航地の1つです。

そもそも、複数のLCCが同じ空港をベースにするのは禁じ手ですよ。同じ立地に家電量販店が出店しても、お互いメリットがないのと同じ。ヨーロッパではLCCがそれをやって、潰し合いを演じました。何をしたら経営が危うくなるのかを先人たちが教えてくれているんです。

いま、本や映画のプログラムを豊富に搭載した機内エンターテインメントシステムを計画していますが、これもLCCをプラットホームにしたビジネスモデル。LCCの原理主義を貫き、余計なお金がかかることは一切せずに顧客満足度を上げていきます。お客様にはいつも「値上げしたらあかんで」ときつく言われていますからね(笑)。

ピーチ・アビエーションCEO 井上慎一
1958年、神奈川県生まれ。三菱重工業を経て、90年全日本空輸入社。北京支店総務ダイレクター、アジア戦略室長、LCC共同事業準備室長を歴任。2011年、A&Fアビエーション(現ピーチ・アビエーション)CEO に就任。「師はパトリック・マーフィー(欧州最大のLCC ライアンエアーの元会長)」と公言する。
(構成=三田村蕗子 撮影=向井 渉)
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