■物理学の常識を覆す日本人

『ハイゼンベルクの顕微』
    石井 茂/日経BPマーケティング

1927年にハイゼンベルクが打ち立てた「不確定性原理」は物理学の常識だった。しかし、名古屋大学の小澤正直教授が2003年にそれを破る「小澤の不等式」を提唱し、今年1月にその正しさが実証され世界中から注目を集めている。今から6年も前に小澤の不等式について一般向けに解説を行った本書の先見の明には脱帽するばかりだ。

■宇宙に広がる新ビジネス

『宇宙就職案内』
    林 公代/ちくまプリマー新書

人類の歴史は「広がる歴史」だった。リスクを冒して大海原を渡り、生活のできる土地を見つけたら、その地に定住して人口を増やしてきたのだ。いま、その広がる先が宇宙空間へ移っている。将来、人類は月や火星に活動拠点をつくることになるだろう。目先のことにとらわれがちな視野を宇宙空間に広げて、「宇宙旅行」など新ビジネスを考えるのに格好の書だ。

サイエンスライター 竹内 薫
1960年、東京都生まれ。東京大学教養学部教養学科、同理学部物理学科卒業。マギル大学大学院博士課程修了。科学評論、エッセイ、書評、講演などを精力的にこなす。『物質をめぐる冒険』『科学嫌いが日本を滅ぼす』のほか、近著として『赤ちゃんはなぜ父親に似るのか』がある。
(構成=伊藤博之 撮影=加々美義人)
【関連記事】
発想のヒントはビジネスから遠い分野にある ~サイエンス9冊
もっと売れる「数理モデル」活用入門
『面白いほど宇宙がわかる 15の言の葉』
流行、ヒットを数字で捉える
科学・技術の12冊/慶應義塾大学医学部准教授 向井万起男氏