とはいえ、自分が言い出したことを、「すみません!間違いでした」と認めるのも簡単ではありません。しかもいい訳せずに頭を下げるのはもっと難しい。ジョイントベンチャーの場合、組んだ相手方の企業にも散々迷惑をかけてしまいます。「誘っておきながらさっさと撤退か!」とボロクソに叩かれても仕方ありません。しかし、せめてこれ以上傷を広げないことが、自分にとっても相手にとっても唯一の解決策であり、最後に示せる誠意でもあるのです。

実際に当時のマイクロソフトは、「これは無理だ。早くやめましょう」と同意してくれました。しかし東電は事業の続行を主張しました。「一度始めたらやめない。これが東電だ」と。いやいや、さすが東電だ。当時はそう思いましたが、やはり東電だった、のかもしれません。

ただ当時は本当に私から誘ったのです。誘いをかけた私が一番悪い。いい逃れはできません。失敗、事件、事故というのは必ず起こります。社長の判断ミス、社員のミス、あるいは窃盗、自殺、商品の欠陥、情報漏洩等など。自分から招いたものであれ、知らずに降りかかってきたものであれ、危機はどんな企業にも訪れます。

そのときにトップがどのような対応をするかで、その組織の体質が見えてきます。たとえば商品の欠陥が明らかになった場合にどうするか。放っておけばユーザーに危険が及ぶような欠陥です。

一刻も早くリコールすること。そして必ずトップ自らが記者会見を行うこと。それも記者からの質問が途絶えるまで徹底的に答えること。しつこく2時間くらいかけてもいいくらいです。「何かを隠している」、そう思われたら終わりです。