弘兼憲史
漫画家、『島耕作』シリーズ作者

俣野成敏

起業家、『プロフェッショナルサラリーマン』著者

【俣野】僕はいつも、「上司の仕事を取れ」と言っているんです。たとえば上司が毎週レポートを部内に出しているなら、自分がそれを代わりに書けないかなと考える。それを上司の名前で作っておきましたといったら、一気に株が上がりますよね。

上司はたいがい自分よりキャリアも裁量もある人です。その人のやってることを、なんとか自分が代わりにできないかなという発想です。自分より給料が高い人がやってる仕事を自分が代わりにできたら、自分の相対的な価値が上がります。

【弘兼】僕がサラリーマンだったとき、こういうことがあったんですよ。各地のナショナルショールームの実績を見ながら、それに応じて本社が予算を配分する仕事があったんですね。いわゆる中央官庁が地方交付税を配分するような部署に僕は居たんです。それで上司に、「この仕事面白いから僕にやらせてください」と言ったら、「ダメだ、これは俺がやる」と断られてしまった。

【俣野】おいしい仕事だったんでしょうね、きっと(笑)。

【弘兼】おいしい仕事だったのかな。あるいはこの仕事を取られたら、もう自分はやることがなくなるっていう理由だったかも。

【俣野】大企業って案外それが多いんですよ。「これは俺が仕事をやってるフリをするための最大の武器だ」と言わんばかりに自分を守るためのブラックボックスを持ちたがる。

【弘兼】実は、その人の予算の配分の仕方が若干間違っていたので、苦情がきていたんですよ。「うちはこれだけ実績を出しているのに、なんで○○ショールームさんより予算が少ないんですか」というような。「たぶんそれは、そのショールームさんとウチの上司の人間関係がいいからですよ」って言ってしまったんですけどね(笑)。