会社事業は土づくりが大切

今年、設立25周年を迎えるパーク・コーポレーション。この不況の世の中にあって売上高は毎年プラス成長を遂げ、順調そのものの業績を上げている。

「ここに来てようやく“Aoyama Flower Market”というブランドを形にすることができたかなと思います。やっとスタートラインに立ったという気持ちです。僕が長期的に目指しているのは“Brand Breeding Company”。新しい種をつくりながら、社名にあるパーク(公園)のように、人々が集まって憩える楽しい空間をつくることが目標です」

その目標に向けて、これまでの業績を生かしながら、新たな一歩を踏み出したところだと言う。

「大切なのは土づくり。良い生産者というのは花よりも土をしっかりつくるんです。土をしっかり耕したり、肥料を蒔いたり。いい土ができれば、今度は良い苗や球根をつくる。そこまでこだわれば、あとはいい花は咲くんですよね。会社も同じです。空気感や価値観の足並みをそろえ、方向性がブレないようにして、それができたら次は最高の人材を集めるために頑張る。今後は土にどういった木や苗を植えて、どういう花を咲かせようかと考えているところです」

地域の活性化も、都会のグリーン化も

アジアンタム、ポトス、エバーフレッシュ、胡蝶蘭……。いつでも花や緑に包まれた空間を提供したいという井上氏の言葉を体現したような社内の様子。グリーンや花で彩られた空間は、さながら都会のオアシスだ。

新たな取り組みとして先ごろ始まったのが、グリーンを活用した空間デザイン事業「parkERs」だ。

「今のところはデベロッパーさんなどから、商業施設や駅中のデザインを依頼されることが多いのですが、もう少し僕らから能動的に空間をつくり、そこに店が集まるような取り組みをしたいですね。また、海外展開もそうなんですが、国内の地方展開をやっぱり考えていかないといけないと考えるようになりました」

特に高齢化が進む地方都市に行くと、地域の過疎化に反比例するように病院に人が集まっている。

「そういうところに、3000円の花束を1回だけ持っていくのではなくて、300円の一輪の花を定期的に届ける牛乳配達のようなサービスができないかなと思っています。また、公共施設などで少し痛んでしまった植物を病院に持っていって、入院してなにもすることがないという患者さんたちに世話をしてもらう。元気になった植物は、その地域の人たちに無料で配る。そうすると患者さんだけでない、病院を中心とした地域のコミュニティーができあがる……そういう仕組みづくりに今トライしているんです」

花や緑、さらにほかの事業も活用して地域の活性化を図る。それも「いい空間づくり」の一環だ。もちろん地方だけでなく、自然が少ない都会も花や緑に包まれているようにしたい。「そういう空間は決して贅沢なものではなく、当たり前のことなんですよ」と井上氏は力説する。